拈華微笑

我が琴線に触れる森羅万象を写・文で日記す

事実は小説より奇なりー義父とジャーナリスト

 (昨日、一度書いたものが手違いで、消えてしまった・・・ボクには手に余る内容でもう二度と同じことを書けないことの不思議さを噛みしめながら、大事なことなのでもう一度チャレンジすることにした。)

 ボク自身のことではなく、義父の立場になって思えば、ということだが<事実は小説より奇なり・・・>という出来事があった。
 義父は来年80歳を迎えるが、それを記念して彼のオペラ歌手としての生涯を書いた本を出版したい・・・という奇特な地元女性ジャーナリストが現れ、去年の12月あたりから準備を進めていた。義父にしてみれば、突然振って湧いた話で最初は戸惑っていたが、そのジャーナリストの熱意に押された形でスタートした。

 オペラ歌手と云っても義父の場合、全盛期55歳のとき突然引退、このジャーナリストは当時相当のショックを受けたという。それで、何故彼女が義父のことを今になって書く気になったかというそのあたりの事情はボクは残念ながら知らない。

 娘であるニコルも彼女のインタビューを我が家で受け、メールのやり取りも何回かあった。ボクもさる会合の場で一度挨拶する機会があったが、175センチのニコルより背が高く、おかっぱの黒髪、エネルギッシュな大きな目が印象的で、あとで彼女が74歳であることがわかったが、そんな風には全然見えなかった。

 その彼女が、一昨日の金曜の朝、他界したのだ。
 運命のいたずらというのか、彼女が義父の本を着手したあたりから発病したらしい。しかし、彼女のこの仕事にかける情熱は冷めるどころかまさに命がけの仕事として一層情熱的にとりかかるようになった。死期が迫っているという焦燥のためか、義父には触れてほしくない事にも迫ったり、音楽に対する見解の相違などがあって、義父には受け入れられない記述にぶつかり合い、暗礁に乗り上げる場面もあり、その為に義父も悩んだりしていた。それでも大すじはあらかた双方満足の状態で出来上がりもう少しというところで、彼女の息が尽きてしまった。亡くなる前日、彼女の後継者の作家にあとつぎを済ませて・・・。

とにかく来年彼の80歳の日にはこの本が出来上がる予定だが、義父の心境を思うと複雑な思いだ。