拈華微笑

我が琴線に触れる森羅万象を写・文で日記す

桜よ

 昼休み、仕事に一段落つけて外に出ると予報に反して小春びより、新人の皿包嬢モモちゃんが<うわっ、桜!>というからそちらを観たら桜とは似ても似つかない寂しげな淡白い花をつけた痩せ木が歩道に植えられていた。モモちゃんにそう言わせたのは春の明るい光が日本人の郷愁を呼び起こし、桜もどきに他のメンバーに共感を促そうとしたのだろう。

 ボクも本当の桜を見たのは高卒後。北海道を出て神戸の王子動物園の桜をみた時、その鮮やかさに感動したのを覚えている。それまでは北海道のじつに慎ましい咲きっぷりの桜しか見たことがなかった。わが故郷の桜は山を見たときところどころほんの小さく白っぽい花を咲かせているくらいで、ちっとも目立たず、桜の思い出というのは皆無でまして花見という言葉すら知らなかった。北海道の春は花見をするには風が<しゃっこい>すぎて。

 だから、関西まで流れてきて、初めて見た、体験した、花見はボクには強烈であった。

 今、よんでいる<清貧の思想>に西行が桜をうたった詩が幾つか載っている。

 < 願わくは 花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ >

 帰宅し、テレビニュースを見ると、モスクワの地下鉄駅、2箇所で女性の自爆があり、多数の人が犠牲になったという。