マリー・アニエネスの箱
きょう,マリーから彼女の箱の連作がパリから届いた。
何重にも紙で包んだ箱には封蝋がしてあった。封蝋をしたモノを貰ったのは初めてだ。
<箱の連作>と言っても,何のことか解らないだろうが、じつはこれを貰って4個目になるが、貰った我々もよく解らないシロモノながら、貴重なモノであることは,我々も薄々というか,わりとハッキリ認識して受け取っている。
こんな手の込んだ,時間をかけた作品を何故我々にくれるのか・・・そのあたりからして謎。
それぞれの箱の中は彼女のその時の思いの時空が込められた小宇宙で、たいがい詩人の詩が添えられている。
今回の箱には,孤独について謳ったリルケの詩が添えられていた。
19x9x2,5cmの箱の中央に装飾した窓枠状の空間に小さい鳥かごがあり、自由を得て飛び去った鳥の羽が2枚残っている,その窓枠に大中小の3匹の蝶が飛び交っている・・・という箱の内容。
よく見ると蝶は一匹で,あとは多分<蛾>である。彼女はこれを<自由>の象徴としての<パピヨン>、つまり蝶として配したのだと思うのだが、それは偶然にもボクが読み終えたばかりの<羊たちの沈黙>の文庫本カバーの少女の口元に配された蛾を思い起こさせた。そしてこの本のなかで <蛾は破壊を意味する動詞でもあった・・・>と書いてあるのだ。
彼女マリーは、いま癌と闘病中でその苦しい状態の中でこれを作り我々に送ってくれた。