拈華微笑

我が琴線に触れる森羅万象を写・文で日記す

<花猫風月>にいたるまで

 2007年にスイスの首都ベルンにある日本大使館の文化広報館でのスイス在住日本人芸術家協会のグループ展が行われた時、このタイトル < 花猫風月 > の写真をボクは展示した。

 2006年の10月に初めてデジタル一眼レフキャノン400Dを買った。(これは日本で言うところのキャノンKISS・X )

それまでは手も予算も小さなボクにピッタリのペンタックSPを愛用して、モノクロフイルムも印画紙も自分で現像していたが、この頃にはボクがいつも資材を購入している小さな店PHOTO・GMにモノクロ用の資材がだんだん減っていく状態を目の当たりにして、デジタルへの移行を決心した。

 デジカメにはいろいろな調節ツマミ、設定の選択が沢山あってとまどうばかり、それといままで銀塩モノクロ一辺倒でやってきたのが、デジカメのモノクロはなんだか嘘くさい気がし、まだカラーの方がマトモなような気がしてカラーのまま暫く撮ることにして、さて何を撮るかな?・・・

 (20年ほどのブランクを経て、2003年現在の仕事に就いてから定期的な時間と経済的余裕が写真活動の復活を促し日曜画家的に週末やバカンスを利用してスイスの祭りなどを中心にモノクロで撮り始めていた。)

 最初からデジイチでバカバカ何でも撮れるわけではないので、練習というか手慣らしに近所の公園や池の花や金魚やカエルなんかを撮っていた。そんなある日、ベルンの友人を訪ね、一緒に歩いていると庭にいた赤茶の背に腹は白毛の猫が何やら親し気にやって来た、ボクは反射的にその様子を連射していた。

 それが、ボクの<花猫風月>シリーズのきっかけの写真となった。それまでボクは特に猫に興味を持ったことはなかったが、これを契機に猫を主体に、以前から芽ばえていた<西洋の中での東洋的表現>の実験が開始された。ボクの頭の中には浮世絵があったし、デジイチの素晴らしい発色はこの主題にぴったりで、白黒からカラーへの移行にはなんの抵抗も無かった。

 猫という主題は日本では猫好きの人達のブロクで山ほど様々な写真を見ることができるけれど、風流といった観点からの作品はあまり見られないようだし、まして西洋の猫では皆無だと思う。ただ、この主題の欠点は洋の東西を問わず猫好きの人達には猫の可愛さしか目に入らないようで、写真として大いに受けるけれどもボクの狙いなんかをわかってくれる人がいるのかどうか?・・・という問題があるけれど。

 この<花猫風月>をいつか日本で展示してみたい。