拈華微笑

我が琴線に触れる森羅万象を写・文で日記す

あの娘は・・いま?

 先日バスに、子犬連れのサングラスのマダムが乗り込むなり、ボクにむかって<馬鹿ヤロー>みたいな口汚い言葉を吐いたような気がしたので女の顔を見ると、昔、我々の一階したのアパートに住んでいたマダム・ダグラだった。

 今から6年ぐらい前であったろうか、彼女が6,7才になる娘と引越してきて、ひっきりなしにラジオのボリームをあげ、ヒールの靴で夜中も絶え間なく室内を歩き回っているのに悲鳴をあげた我々は、何度も彼女に談判に行っては、裏切られ、最後に家主である不動産業者に再三苦情を書いたりしているうち、ある日警察が彼女のアパートに来て調べて以来、彼女はアパートに戻ってこなくなった。

 麻薬中毒者であった彼女は、彼女なりに更生しようと努力していた時期もあったようだが、結局それができずにずるずるとまた麻薬にはまっていったようだ。時折、我々のところに、娘を使って調味料だの借りに来ていた時もあった。そんな頃は真面目に仕事に励んでいた頃で、周りの人達も温かい眼で見守っていたのだが。・・・

 まともに食事も摂っていなかったのではないか,と思うほど痩せぎすで、学校にもほどんど行ってなかった、あの娘はどうなったのだろう・・・と時々思い出したりしていたが、あれから一度も見かけたことがない。

 マダム・ダグラは下に住んでいた頃からいつもサングラスをしていたのでよく顔を覚えることが出来なかったが、先日久々にすぐ近くで顔を見ても彼女だとは直ぐにわからなかった。相変わらずサングラスをかけ、その下に見えていた前歯が上下とも麻薬で削られてほとんど無くなっていたのが不気味であったが、彼女がさすっている丸く膨らんでいる下っ腹を見た時ほどショックは受けなかった。

 麻薬中毒の身で妊娠している彼女を見るのは辛かった。