拈華微笑

我が琴線に触れる森羅万象を写・文で日記す

ぜんぜんZen?

先日、3月19日(月)に友人のお誘いで、スイス&日本文化交流サークル主催による『言葉と文化』をテーマで二つの講演にでかけた。
そこで行われたフランス人講師による『西洋で禅の発見』…というタイトルで40分程度、禅が第二次大戦後、西洋に及ぼした影響などが、それに関わった
人物写真がスライド映像で見ながら紹介された。
フランス語が場合によって60〜80%ほどしか理解出来ないボクにとって、この講演が禅の肯定的な影響について話されているとはじめから思いこんでいたので
ボクの馴染みの鈴木大拙さんなんかの写真を見て喜んでいたのであるが、途中でボクの耳でも聞き取れた内容で『スズキ大拙は戦中、戦争を奨励していた…』
『そういったことは英語で書いて、和訳されていないから日本人は知らないけど…』・・・などと話しているのを聞いた、ような気がして…おかしいなぁ〜
と思いながらも、面白おかしく話す講師の早口フランス語に正直なにが言いたいのかハッキリ解からずにいた。
帰り中華レストランによって、ボクの疑問をニコルに問いただすと、ニコルも彼の講演内容に驚いたというのだ。
鈴木大拙をはじめ、西洋に禅を広めた人々を下品な表現で貶(おとし)める内容で耳を疑ったという。
ボクは彼が語った俳句について、その一部のフランス語をよく聞き取れなかったが、ニコルによると俳句すら禅はなんの関わりも無い…と言ったそうだ。
『弓と禅』で有名なオイゲン・ヘリゲルの話はボクにもわかったが、『ヘリゲルはナチスの協力者で弓道の師範(日本人)の言動はクレイジーだった』
とジョーク風に言ったことはよくわかった。

『侘び寂び』を中心にした日本文化に『禅』の影響は計り知れないと確信しているボクにとって
鈴木大拙氏が『戦争を奨励した』…などという話がどれだけデタラメであるか、自称『鈴木大拙ミニ研究家』としては全く聞き捨てならない講演であった。
 
それにしても日本とスイスの文化交流のサークルが、この様な人を講師として招く(しかも2回目とのこと)ということが、信じられない。

普段、なんでも人の善意を信じてボーッと受け入れる自分だが、こういうことも『あるのか!!』とショックを受けた一日であった。

今日は一日、『芭蕉入門』井本農一著を読み、芭蕉38歳の時仏頂和尚に参禅の事実を確認し、その後の孤高の精神に生きた芭蕉の生きざまを観るにつけ
世の中には、上記の如く戯言を商いにして生きる人種もいることも悲しい事実であると肝に銘じるのであった。

             野ざらしを 心に風の しむ身かな  : 芭蕉