拈華微笑

我が琴線に触れる森羅万象を写・文で日記す

二人の義伯母

ニコルには二人の伯母がいる。ともに92歳。

母の姉、シモンは夫とともに国連の同時通訳だったという。彼女はジュネーブに住んでいて、ボクも10回以上は会っているが二人っきりでジックリ話をしたことがないので、彼女についてはユダヤの家系であることと、ニコルから聞いた断片的なことしか知らない。
二人の息子がいるが、今年銀行に勤めていた次男が定年退職した。

父の姉、クロディーヌは第二次大戦中、ポーランドから逃れてきた兵隊と結婚したため、教師の定職に就くことが出来ずに、裁縫の先生となって働いたという。
(スイスは男尊女卑の国で偏狭なところがある国だ、女性参政権がなんと1971年だった。信じられる?戦争を体験していない国だから?)
二人の息子、一人娘がいる。伯母は熱心なキリスト教プロテスタント信者で毎日曜日ミサにいくような人で、とてもオープンな人柄で初めて会ったときも
とても暖かく迎い入れてくれたことをよく覚えている。
彼等の子供と、ニコル姉妹は同年輩だから、一緒によくキャンプしたりバカンスを過ごした楽しい思い出が沢山ある大切なファミリーだ。

彼女達からしたら姪の婿であるボクは本当に『どこの馬の骨?』であるのに、この伯母達はそれぞれのやり方で親切にしてくれた。
ローザンヌやジュネーブで写真展をした時、この歳いったご婦人達がわざわざ足を運んできてくれた時は本当にうれしかったものだ。

この二人の義伯母達に共通しているのは、頭がじつにクリアーであること。本当にいろいろなことをよく覚えている。
それと、もう一つは今年になって『老人ホーム』に入ることになった事。

彼女等はそれぞれ長年住んでいた家、アパートに別れを告げた。

ボクなどはその変化を悲痛な想いをイメージしていたが、当人達はそうでもないようなので安心した。
シモンはなどは、老人ホームで唯一自分の部屋にWifiを取り付けているお婆さんなのだそうだ。

年老て体が年々不自由になっていく中、あれこれ心配することから開放されることは案外大きいことのようだ。