雨夫婦のトリノ
先週、今週と学校が休み、したがって小児科のクリニックに勤める相方も一週間のバカンスであった。
近場でどこか2泊ぐらいで行きたい…ということで、ボクの以前から希望でトリノへ行くことになった。
地図で見ると、直線で300Kmぐらいのところなのだが、なにせアルプス山脈の壁が立ちはだかり、車のない我々は
安いインターナショナル国鉄切符を手にして4時間の電車の旅に出かけた…
しかし、出かけた4月10〜12日はちょうどピッタリハマるように『雨予報』で、実際信じられないくらい雨が降った。
しかもボク等が宿泊したアパート・ホテルは最上階の屋根裏部屋で、最初は情緒があっていいね〜…と思っていたが
雨脚が強まって、あまりの雨音で寝付けないほどであった。
アルプスの麓を走るイタリア国鉄は各駅停車で、廃屋が散見する小さな町々の駅で乗り降りするのは大半がアフリカ黒人で
あったのが違和感を感じたが、そう云えば近年アフリカから高額の船賃を払って難破船の如くボロボロの状態でイタリア地中海
沿岸の町にたどり着くアフリカ難民問題を思い出した。
冷たい雨が降りしきるこれといって産業の無い町を通り抜ける風景は淋しげだった。
相方もボクもはじめて訪れた期待のトリノは、一般的なイタリアのイメージとはだいぶ違っていた。
雨が降っても計18Kmに及ぶショッピングアーケードがあるので安心…てな言葉が旅行案内にあって、こりゃ万一
雨でも大丈夫だね・・・なんて思ってはいたのであるが、実際歩いてみると、気温もスイスの我がローザンヌより
低く、アーケードも建築的に重く、どこか垢抜けしない様子で街の美化に力を入れてないのが見えたし
事実、2日目の朝センターに有る観光局へ行ったが、やる気のない不親切な案内にはがっかりした。
しかし、いろいろな人に道を訪ねたり、話しかけたりした限りでは人々は皆親切でであったし
たまたま入った小さなイタリアレストランの我々と同年配の女主人は大変親切な対応で、お勧めのカルボナーラは
ほんとに美味しく7ユーロと安かった。ニコルは特にこの女将が気に入って精算する時、色々話し込んでいたが
彼女は作家活動もしている…とのことで盛んに感心していた。
2日目の夜、折り紙…という名の日本食レストランへ行った。最初日本人のいない日本食レストランには行きたくない…と
ごねていたニコルが折れて連れてきたのだが、親切なスタッフと熱燗と3千円で食べ放題のメニューに気を良くして
しばし雨模様を忘れることができた。
雨の時は、やっぱり美術、博物館めぐり…で
サヴォイア王家の宮殿は僕らにベルサイユ宮殿を思い出させるほど(規模はやはり小さい)立派なものだった。
同じ一角で意外にも、『Frank Horvat』という今年90歳になる、1950〜80年代にボーグ、ハーパスバザー誌などで活躍した
写真家の写真展が行われていた。コンテンポラリーの写真しか見られない今日、彼の世代の落ち着いたモノクロ写真はやはり
いいと思うし、また写真家にしては珍しい彼自身のコレクションも展示してあり、ボクもよく知っている有名写真家の写真も
幾つか展示してあって見ごたえのある写真展に満足した。
ジョギングにいく近所の公園の木蓮
旅行して帰宅していつも思うのは、やっぱりローザンヌはイイね〜…だけど
帰った途端、晴天でほぼ満開の木蓮(マグノリア)に翌日の散歩で迎えられた図
(桜の少ないこのあたりでは、木蓮はボクの『桜』だ。)
トリノではニコルに『あんたが雨女』というと、『あんたも雨男』と応酬されて
このところ、『晴れ男力』が低下したのか、二人での旅で雨の確率が上がっている。