拈華微笑

我が琴線に触れる森羅万象を写・文で日記す

IQ70の無事是貴人

フォレスト・ガンプ(Winston Groom著)読了。

 最近読んでいてサッパリ理解出来ない本を読んでいたせいばかりではなく、この本はボクをほのぼのとした気持ちにさせてくれた。

 主人公フォレストはIQ70以下(だいたい5−10歳程度の知能)という設定・・・だけど数学は天才的で映画ではなかったが、宇宙飛行士となってNASAから飛び立ったり、アメフト、卓球、チェス、プロレスのチャンピョンで、ハーモニカの名人、エビの養殖で金持ちになる・・・というのはいくらなんでも・・・とは思ったけれどその素朴な人柄はピーター・セラーズ主演の映画「Chance」とはまた違うが、何れも東洋的 ”愚” に一脈通ずるものを感じさせる。
 禅の修行をしていた時、ときおり老師がわれわれ修行者に禅語を書いた短冊をくれたが、ボクが最初に貰ったのが
<無事是貴人>というもので、その頃はこの言葉の意味がよく分かっていなかったので、地味なこの言葉の短冊を貰ってもさして嬉しくなかった記憶がある。老師はよほどこの禅語が気に入っているらしく2度目の短冊もこれでガッカリしたものだ。
 今はこの言葉を頂いたことに感謝できるようになったが、フォレスト・ガンプはまさに<無事是貴人>の人であると思う。頭が悪いからではなく、一瞬一瞬をわき目もふらず懸命に生きることが出来る人だから。

 この本を読んで一つ自分のことで気がついたことがある。ボクも大勢の人と同じようにフォレストのような人間が好きだが、逆に嫌いなのは自己を装飾する人間ということだ。今までその事を真剣に考えたことが無かったが、ボクがこの世でなんといっても一番嫌いなのは “飾る”という一切のものそして行為であるということ。

これまでは無意識であったが、生まれて死ぬまで一貫したボクの人生のテーマは案外<無事是貴人>かもしれない。

 知人に無理に声を低くして男性らしい発声をする男がいる。取ってつけたような高笑いする人がいる。こう言ったことも続けていればやがてその人のものになるのかも知れないが、ボクにはどうも臭い気がする。そしてその人自身の真実からどんどん遠のいていくのがわかる。

 その反作用で、電話に出たボクに「ボンジュール、マダム!」と言われるのも考えものだが・・・。