拈華微笑

我が琴線に触れる森羅万象を写・文で日記す

あるスイスの高校3年生

タンデムという、日仏語交流会に週一で参加しているが、昨日は一年ぶりで再会した高校生サミュエル君と一時間は日本語で、もう一時間をフランス語で会話を楽しんだ。

子供のいないボクとしては、高校生…特にスイスの高校生と話をする機会はなかなかないので、彼一人をもってしてスイスの高校生全体像を判断するというのは無茶なことは当然であるが、一見どこにでもいるような?スイスの高校3年生のサミュエル君との会話を通して感じた、彼の知識レベルや人格的なあり方というのが、ここスイスにおいてどのようなレベルに位置するのであろうか・・・というような感慨を抱いたのだ。

彼は2年前に日本の高校に留学した経験があり、彼の日本語会話能力は普通の会話だとなんの問題もなく、この日彼が持ってきた日本語の本は河合隼雄著の文庫本で、これまた問題なくよめるということであった。

その後、多岐にわたって話をしたが、その豊かな知識には舌を巻いた。

じつは30分後、もう一人日本人女性が加わって3人での会話になった時、ボクが禅僧の円相の書の話をした時、日本人女性のほうが『円相』について観たこともない…ということであったが、サミュエルは知っているようで、自分の携帯でググって彼女に円相の書の写真を見せていた。ボクはその両方の出来事(日本人女性が円相について知らない事、外人のサミュエルが円相を知っていた事)に正直驚いた…。

若きサミュエル君は、来年からチューリッヒにある連邦工科大学(通称ETHZ:エテハ)に入学することが決まっているそうだが、学部の選択には3っあって未だに迷っているという。それは一つは『数学科』、二つ目は『コンピュータサイエンス』、三つ目は『コンピュータプログラム』だそうだが、おそらく『数学』を選ぶ…ようだ。

スイス国内には2つの有名な工科大学がローザンヌとチューリッヒにあり、彼によればローザンヌ工科大学はヨーロッパで有名で、チューリッヒ工科大学は世界的に有名、特に数学の分野では大変優れている…ので、彼はチューリッヒ工科大学を選んだという。

それともう一つの大きな理由は、ドイツ語で授業が受けられることだそうだ。

彼はスイスの言語境界フランス語とスイスドイツ語の街で生まれ育ち、母親はイタリア人であったから、彼にとってはフランス語が母国語で、次にイタリア語、英語、ドイツ語が一線に並び、その下に日本語がくるという・・・。未だ18歳の若者、日本ではカツ丼と豚骨ラーメンにぞっこんとなり、柔道を習い怪我した時期にホームステイのおじいさんに将棋を習って、滞在中におじいさんを負かすほど上達し、高校の名物行事『104Km』強行遠足に参加し忘れられない生涯の思い出となった経験。それに照れながらも話してくれた日本人のガールフレンドとの湖畔のベンチでの出来事…まで、そこで、フランス語ではジュテーム(愛してます)しかないのに、日本語だと愛の他に恋という言葉もあってニュアンスが豊富なところがいいですね!!というのだ。

そうそう、今回の一番最初の会話は最近の日本人高校生の流行り言葉『卍!』と言いながら両手を握って絡める仕草…(ボクはまったく知らなかったが)の解説からであったことを記しておこう最後に。

いやいや、忘れていた、彼の着ていたTシャツは『北斎の富士』を描いた有名な絵の一っであったが、日本でお世話になったホームステイのお母さんが送ってくれたモノで、その後の会話に『不立文字』(文字や言葉では言い表すことが出来ない真理)の話しが出た時、彼は例え話として『北斎の富士山』と『セザンヌが描く山』との意味合いの違いについて話したことを付け加えておこう。

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    高校生の着ていたTシャツに描かれていた北斎の富士の図