拈華微笑

我が琴線に触れる森羅万象を写・文で日記す

ジョークは冗苦

 金曜日の夜、ローザンヌの街中にある、ボリミー(過食症)という名のお笑い専用の100席ほどの寄席へ行ってきた。
スペイン系ベルギー人の独演で何故かスペイン語で話しかけたり、突然アラブ語になったり、ベースはスペイン語訛のフランス語であるが、客はみんなフランス語圏スイス人であるから、途中で彼が何を言っているかわからない、というのも可笑しい要素として計算されているようであった。
 その前日の夜ニコルの友人Tから電話があり、『ボリミーの入りが悪いのでだだ券を10枚貰ったから、あなた達も行かない?』
といので我々も出かけたわけである。50席ほどうまっていて、このうち金を払って入場している人は何人ぐらいいるのかなあ〜
なんて邪推しながら観覧したが、チャップリン風の体の動きや,簡単なマジック、客を舞台に上げての即席の劇を演出などして結構受けていた。

 話はここで一般論になるが
問題はこの"笑い"で、ボクのような無語学の怠け者はこの地では普通『失笑症』にかかる。笑えないのである。何故ならここに言葉の壁という見えない厚い壁が立ちはだかっているのである。最近スイス人男性と5年目にして離婚した友人はしみじみと言った。『ふと考えてみると、長いこと笑ってない自分がいるのよね・・・』てな事が別れた理由の一つの如く言っていた。

 初めてスイスに来た時、友人の知り合いの家に招かれ、そこのご主人が食卓を囲む5、6人の前であるジョークを披露して
大いに受けたが、ボクが解らないでいるのをみた彼は英語ならわかるだろうと、英語でそのジョークを話してくれた。ボクは内心大いに焦った。英語力もたいした事がないのに・・・軽いはずのジョークを必死で聞き取ろうとしている自分が可笑しくなって、ボクはジョークにではなく、そんな自分に可笑しくて笑っていた。こんなに曲折して笑っているとはホトケ様でもわかるまい。

 以来、スイス人の食卓にはワインとジョークは必需品であると痛感するのであるが・・・。